海キャンプの記事を書くと、ほぼ毎回のように飛んでくる質問があります。
「風間さん、玄界灘みたいな風の強いところでも、タープ張って大丈夫なんですか?」ってやつです。
結論から言うと、「どんなコンディションでも張ってOKなタープ」なんて存在しません。
ただし、アウトドアメーカー勤務時代からずっと現場で検証してきた感覚で言うと、
- 「張っていい風」と「やめたほうがいい風」を見分ける力
- その日の風に合わせた“タープのフォーム(張り方)”
この2つさえ押さえておけば、タープは強風下でもちゃんと味方になってくれるギアになります。
僕自身、20代のころは完全に「とりあえず高く張って映えさせたい病」にかかっていて、
玄界灘沿いでヘキサタープをほぼ“帆船モード”にしてしまい、本気でヒヤッとしたことがあります。
そこから反省して、メーカー時代にはショップの店頭やフィールドでタープ設営講習の講師を担当したり、
風速10m前後の海沿いサイトで「どこまでなら安全に張れるか」を何パターンも検証してきました。
この記事では、そのときの経験と、今でも玄界灘エリアで実際に張り続けているリアルな感覚をベースに、
- 「どのくらいの風ならタープを張っていいのか」
- 「風に強いタープの種類と、具体的な張り方のコツ」
- 「これは危ない…と思ったとき、どう撤退するか」
を、キャンプ仲間に話すテンションで、でもプロ目線できちんと整理していきます。
玄界灘クラスのフィールドでも、
「今日の風ならここまではOK」「ここから先はタープ撤収」を、自分で判断できるようになってほしい。
そんな思いで書いているので、ぜひコーヒー片手に、肩の力を抜いて読み進めてもらえたらうれしいです。
なぜ“強風タープ”が難しいのか

タープは「日よけ」じゃなくて、風から見たら完全に“帆”
まず、ここをガチで押さえておきたいんですが、タープ=風から見たら「巨大な帆(ほ)」です。
僕らはつい「日よけ」「リビングを広くする屋根」として見ちゃうんだけど、風の立場に立つと話はまったく変わります。
- 横風をモロに受ける → ポールがぐにゃっとしなる・最悪抜ける
- 上からのダウンバースト(突風) → タープ全体が持ち上がってペグが飛ぶ
- 風向きが変わる → さっきまで安定してた張り方が一気に不安定に
つまり、インスタでよく見るような、
「高め・大きめ・パーンと張ったキレイなフォーム」=「風から見たら最高に都合のいい“帆船モード”」
になっていることが、本当に多いんですよね。
タープ設営が難しいと言われる理由は、ざっくり言うとこの2つです。
- 「見た目」「居住性」「風への強さ」の三つ巴バランスを取らないといけない
- しかも風は一定じゃなくて、向きも強さもコロコロ変わる
僕も20代の頃、玄界灘沿いでヘキサタープを「とにかく高く・開放的に」張った結果、
突風一発でタープが完全に帆になって、ポールが前方にダッシュしそうになったことがあります。
あのときは本気で「これ誰かに刺さったらシャレにならん…」と血の気が引きました。
それ以来、「カッコよさ9割の張り方」より、「風と友達になれる張り方」を優先するようになりました。
海沿い、とくに玄界灘クラスのフィールドでは、ここを割り切れるかどうかで一日の安心感がまるっと変わります。
風速の目安を“数字”じゃなくて“体感”でも覚えておく
強風キャンプの話になると、よく出てくるのが「風速◯m/s」という数字。
ただ、初めてだと正直イメージ湧かないと思うので、僕が玄界灘エリアで何度も試してきた体感値もセットで書いておきます。
- 〜5m/s:
「あ、ちょっと風あるな〜」レベル。
タープは高さ控えめ+ペグしっかり打てば全然OKなゾーンです。 - 5〜8m/s:
タープは低く・面積小さめ・風上をしっかり落とす前提なら、まだ楽しめるゾーン。
ヒラヒラしたタープや、ポール4本立ての大開放スタイルはそろそろ危険信号。 - 8〜10m/s:
タープはかなりシビア。
僕はここから先は「状況次第で張らない」選択肢が普通に出てきます。
どうしても張るなら、ポール1本・片側完全に地面まで落とした“シェルター寄り”な張り方にしています。 - 10m/s超:
タープは原則「今日はやめとこ」ゾーン。
テントも低く張る+ペグ全打ち+ガイロープ総動員モードです。
正直、「タープを張るかどうか」じゃなくて「そもそもキャンプ続行するか」を考えるレベル。
気象庁も公式に、風速ごとの体感・影響をまとめたページを出しています。
「風速10m/s前後からは、風に向かって歩きにくい」といった表現が載っていて、キャンプの判断材料としてかなり参考になります。
風の強さそのものについては、気象庁公式サイトの解説を一度ざっと読んでおくとイメージしやすいです。
気象庁|風の強さと吹き方(公式解説)
キャンプに行く前に見る予報そのものは、同じく気象庁公式の天気予報ページからチェックしておくと安心です。
気象庁公式サイト|天気予報・防災情報
僕のルーティンとしては、
- 出発前:天気アプリ+気象庁の予報で「風向き・風速の数字」をチェック
- 現地:体感+タープ(orテント)の揺れ方を見て、その場で微調整
という「数字」と「体感」の二段構えで判断しています。
慣れてくると、
「この風なら、ポールはあと10cm下げとくか」
「今日はタープやめて、テント+オープン前室でいこう」
みたいな判断が、かなり冷静にできるようになってきます。
強風タープが難しいのは事実だけど、
「タープはいつでも張れる魔法の屋根じゃない」
「風に対しては、常に巨大な帆になり得る」
という前提さえ忘れなければ、ちゃんと安全側に振った設営ができるようになります。
フィールドに着いたら|まず最初にやる“風読み”

タープを広げる前に「風の筋」を探す
僕がフィールドに着いて、いちばん最初にやるのはテント設営でもタープでもありません。
まずやるのは、だいたい「5分間の風散歩」です。
いきなり車の横でタープを広げ始めると、だいたい「そこ、風の通り道ど真ん中だよ」って場所を選びがちなんですよね。
20代の頃の僕がまさにそれで、景色優先で張っては突風でタープがバフッ!!ってあおられてました。
なので今は、タープを袋から出す前に必ずこんなことをやっています。
- サイトをゆっくり歩きながら、どの方向から一番風が抜けているかを体で感じる
- 木や草の“傾き方”を見る(葉っぱの裏側ばかり見える方向が風上)
- 谷・尾根・開けた方向をチェックして、「風の通り道のライン」をざっくりイメージする
玄界灘沿いなんかは特にそうなんですが、
同じサイトの中でも「風の通り道」と「ちょっと風が抜けにくいポケット」がはっきり分かれています。
一度、「うわここ海の眺め最高!」って場所にタープ張ったら、
案の定そこが風の直撃レーンで、ポールが一晩中しなりっぱなし…。
夜中に起きて「いやこれ、最初に5分歩けば気づけたやつじゃん」と反省したことがあります。
それ以来、
- 景色より先に風の筋を見る
- 「風のレーン」と「少し外れた位置」の両方に立って、体で比べる
という工程を、タープ設営前の儀式みたいなものにしています。
風上を“背負う”のか、“受け流す”のか決める
風の筋がなんとなく見えてきたら、次はタープの「戦い方」を決めるフェーズです。
ざっくり言うと、スタンスはこの2パターン。
- ① 風上を背負う張り方
・風を背中側で受け止めつつ、風下側にリビング空間をつくるイメージ。
・ヘキサタープなら、風上側のポールを低く、風下側だけ少し高くする「前下がり」スタイル。
・体感としては、タープの後ろ側で風が「ドン!」じゃなくて「スッ…」と上に逃げていく感じを目指します。 - ② 風を“いなす”張り方
・レクタやスクエアタープで使いやすい考え方。
・タープの長辺を風向きとほぼ平行にして、「面」で風を受けないようにする。
・タープを風に対してナナメに構えて、風をそのまま横に流してあげるイメージです。
大事なのは、どっちを選ぶにしても、
「風を真正面から受けない」=タープを“壁”ではなく“風の通り道の一部”にする
という発想に切り替えること。
昔の僕は、「ここ景色いいから、海に向かってドーンとタープ張ろう!」ってやりがちでした。
結果、海側からの風を真正面でキャッチ → ポールがずっとバインバインという、完全なる帆船スタイルに…。
今は同じ場所に立っても、まずこんな感じで考えます。
- 「今日は風強めだな → 風上を背負うスタイルで、風下側をリビングにしよう」
- 「風向きがコロコロ変わりそうだな → レクタを風向きと平行気味に張って、どっちに振れても“面”で受けないようにしよう」
タープを「日よけの屋根」として見るんじゃなくて、
「風との位置関係をデザインする道具」として見ると、一気に張り方の引き出しが増えます。
フィールドに着いたら、まずは5分だけ風散歩。
それから、
- 「今日は風上を背負うか?」
- 「それとも、風をいなすか?」
この二択を、最初に決めてみてください。
ここが決まると、そのあとのポールの本数・高さ・ペグ位置まで、けっこう素直に決まってきます。
タープの種類ごとの“風との付き合い方”

ヘキサタープ|汎用性は高いけれど、油断すると一瞬で“帆船モード”
まずは、キャンプ場でも一番よく見かけるヘキサタープからいきましょう。
僕も20代のころは「タープ=ヘキサ一択でしょ」と思っていて、とにかく高く・大きく・写真映え重視で張ってました。
結果どうなったかというと──玄界灘沿いで見事に帆になりました(笑)。
風がビュンと抜けた瞬間、タープ全体がグワッと持ち上がって、ポールが前のめりにダッシュ。
「あ、これマジで誰かに刺さったらニュース案件だ…」と一気に冷や汗コースでした。
それ以来、ヘキサと付き合うときは、こんな基準で見ています。
- 風が弱いとき:
→ 映え優先でOK。高く・大きく・形を整えて、美しく張って楽しみましょう。 - 「ちょっと風出てきたな…」くらいのとき:
→ 風上側のポールを一段低くする+ガイロープを1〜2本追加。
これだけで、タープの落ち着き方がかなり変わります。 - 「あ、これ本気で吹いてきたな」というタイミング:
→ 迷わず片側を地面スレスレまで落として“片流れフォーム”にチェンジ。
風上側をほぼ壁にして、風下側だけ最低限の居住空間を残すイメージです。
僕の中では、ヘキサの基本フォームは完全にこれです。
「風上は低く・風下だけ少し高く」= 風に対して“フタ”じゃなくて“なだらかな屋根”にする。
このイメージさえ持っておけば、「高く張りすぎて一瞬で帆になる事故」はだいぶ減らせます。
見た目をちょっとだけ妥協して、そのぶん夜の安心感を買う。ヘキサを海沿いで使うときは、そんな感覚で付き合うのがちょうどいいと思います。
レクタ・スクエアタープ|低く張れば、“守ってくれる屋根”に変わる
次はレクタタープやスクエアタープ。
これらはポール本数やガイロープの取り方次第で、性格がガラッと変わるカスタム性の高いタイプです。
正直に言うと、「今日は風が強そうだな…」という日は、僕はレクタ or スクエア一択にすることが多いです。
ヘキサの“絵になるシルエット”も大好きなんですが、ガチの風日に頼りになるのは、やっぱりレクタ系なんですよね。
強風前提でレクタを張るとき、僕が意識しているのはこの3つです。
- 面積を小さく・高さを低く
→ 「Aフレーム」「片流れ」「変形ウイング」みたいな、
ポールを少なめ+高さをグッと落としたフォームにする。
タープの「見える面積」を減らすイメージです。 - 長辺を風向きとほぼ平行にする
→ タープの長いほうを、風の流れと同じ向きに合わせて、
風に対して“薄い板”として見せる。
これだけで、真正面から「ドン!」と受けるリスクがグッと下がります。 - いざとなったら片側を完全に地面まで落とす
→ 風が本気でキツいときは、「これはもう風防だな」くらいの割り切りで一面を落とす。
そこまでやると、本当に「守ってくれる壁+屋根」に変わります。
レクタ・スクエアは、ヘキサと違って直線で構成されているぶん、風のコントロールがしやすいんですよね。
「今日は攻める日」「今日は守る日」で、張り方をガラッと変えられるのが、強風キャンプでの大きな武器になります。
玄界灘クラスのフィールドで、「今日はちょっと風が怪しいな」と感じる日は、
僕は迷わずレクタ or スクエア+低め設営モードに切り替えています。
シェルタータープ・スクリーンタープ|快適性最強だけど、“出さない勇気”もセットで持つ
最後にシェルタータープ・スクリーンタープ系。
これはもう、快適性という意味では最強クラスの装備です。
風除け・虫除け・日よけ・プライベート感、全部盛り。ファミリーやグループで使うと「これはもう野外リビングだな…」ってレベルになります。
ただ、この手のシェルター系は、風に対してもデカい“壁”になりやすいというリスクセットでもあります。
僕がシェルターを玄界灘側で出すかどうか判断するときの、ざっくりラインはこんな感じです。
- 風速 〜5m/sくらい:
→ 設営OK。ただし、最初からガイロープ多め+ペグは全部打ちが前提。
「まあ大丈夫っしょ」ではなく、最初に本気の固定をしておきます。 - 5〜8m/s:
→ 地面の状態(砂か芝か・ペグの効き具合)と、サイト全体の風の抜け方を見てから決めるライン。
僕はここから先はちょっとでもイヤな予感がしたら出さない方向に寄せます。 - 8m/s超:
→ 正直、「今日はシェルターやめとこう」ゾーンだと思っています。
立てたあとに「やっぱりやめよう」と撤収するのがめちゃくちゃ大変なので、
そもそも袋から出さない判断をすることが多いです。
シェルタータープやスクリーンタープは、一度立てると「せっかくここまで組んじゃったし…」という心理が働いて、
ちょっと風が上がっても撤収の判断が遅れがちなんですよね。
だからこそ、経験者ほど
「今日は風読んでコイツは出さない」
という判断を普通にやっています。
これ、カッコつけじゃなくて安全側に振り切るためのテクニックのひとつです。
僕も、玄界灘沿いでシェルターを袋から出しかけて、
設営前にもう一回だけ風を感じてみて「うん、今日はやめとこ」と引っ込めたことが何度もあります。
タープもシェルターも、「張れるから張る」じゃなくて「今日は出していい風かどうか」から考える。
この視点を持てるようになると、強風キャンプのストレスとリスクは一気に下がります。
“風に強い”タープ設営の基本フォーム

低く・面積小さく・ペグは本気で
強風下でのタープって、難しいテクニックが必要なイメージがあるかもしれませんが、実は原則はめちゃくちゃシンプルです。
- 高さを欲張らない(頭が当たらないギリギリでOK)
- タープの「面」を小さくする(片側を落とす・ポール本数を減らす)
- ペグ&ガイロープは「いつもの1.2〜1.5倍盛り」で本気を出す
玄界灘沿いで何度か吹き飛ばされかけた末に、僕が落ち着いた具体的なやり方はこんな感じです。
- ポールの高さは、180cm → 150cm前後まで一段落とす(「立てば頭は当たらないけど、座ればだいぶ低い」くらい)。
- 風上側は、タープの端を地面スレスレまで落として“壁+屋根”にする。
- ペグは30cm以上の鍛造ペグ or ステンレス製のロングペグをメインで使用。
- ガイロープの角度は45度前後を意識して、しっかりテンションをかける(引っ張りすぎてタープを歪ませない範囲で)。
これをやると、写真映えの「バサッと大きく広げたタープ」感はちょっと減りますが、その代わりに
- 突風が来ても、タープ全体が「受ける」じゃなくて「いなす」動きになる
- ポールがバインバイン暴れず、一晩中ヒヤヒヤしなくて済む
というメリットが一気に増えます。
20代のころの僕は、玄界灘のキャンプ場で「どうせなら高く張ってカッコつけたい病」をこじらせていて、
まあまあの爆風の中でヘキサをハイポジションにしてしまい、夜通しタープの動きが気になってほぼ寝てませんでした。
それを経験してからは、強風が予報で出ている日は、設営の時点で
- 「今日は映えじゃなくて、生き残り優先デー」
と決めて、最初から低く・面積控えめのフォームで張るようにしています。
「追加ガイロープ」をケチらない
もうひとつ、強風タープでありがちなパターンがこれです。
「メーカー標準のロープ本数だけで張って、そのまま戦おうとする」
正直、タープに付属している本数は、無風〜微風・標準設営用の“最低限セット”だと思っておいたほうがいいです。
玄界灘クラスのフィールドで本気の風が吹くときは、あれだけでは心もとない場面が多い。
なので僕は、標準セットに加えて、最初からこんな「盛り方」をしています。
- センターライン(タープの真ん中付近)に、追加ガイロープを2本
→ タープ全体が“バサッ”と持ち上がるのを抑えるための、補助の支えにします。 - 風上側の角にも、1本ずつ補強ロープ
→ タープの角が風でめくれ上がるのを防いで、「入口が常にバタバタしてる問題」をかなり軽減できます。
イメージとしては、
「カタログ通りの張り方」→ デモ用フォーム
「ガイロープを盛った張り方」→ 実戦用フォーム
くらいの感覚です。
僕のタープバッグの中には、いつも
- 5〜7mのガイロープを4〜6本くらい予備で巻いたもの
- 追加用の自在金具(ロープ tensioner)
が常備されています。
現地で「今日はちょっと風強いな」と感じたら、迷わずこの予備ロープを使ってその場で補強を盛るのが習慣です。
追加ガイロープって、数百円〜数千円の出費で済むのに、
「一晩中タープが飛ばないか不安」問題をかなり減らしてくれる、コスパ最強クラスの投資なんですよね。
メーカーごとの基本的な設営方法や推奨ロープ本数は、それぞれの公式サイトでも解説があります。
普段使っているブランドがあれば、一度「タープ 設営ガイド」や「取扱説明書(PDF)」を公式からチェックしておくと、標準フォームがイメージしやすくなります。
そのうえで、現場では
- 「今日はカタログ通り+追加ロープで防御力マシマシ」
くらいのノリで盛っていきましょう。
タープは、ケチって最低限で張るより、ちょっと過保護なくらい補強したほうが、結果的にのんびりコーヒーを飲めます。
強風の玄界灘でタープを飛ばしかけた経験者として、これは胸を張って断言できます。
風速別・風間式“タープ運用ルール”

風速〜5m/s:フォームだけ意識すれば、いちばん“おいしい”ゾーン
まずは一番気持ちよく遊べるレンジ、〜5m/sくらいの風。
体感的には、
- 焚き火の煙が「ふわ〜」っと一定方向に流れていく
- タープの端がちょっと揺れるけど、「バサバサ」とまではいかない
- 風上を向いても、普通に会話できるレベル
このくらいなら、基本的にヘキサでもレクタでも、好きなタープを張ってOKだと思ってます。
- タープ:なんでもOK(ヘキサでもレクタでも好みで選んでOK)
- ただし風上側のポールは少しだけ低めにしておく
- ペグは最低でも30cmクラスの鍛造 or ステンレスを使う
20代の頃の僕は、このレンジでも風上・風下をあまり意識せずに「とにかく高く張るマン」だったんですが、
ちゃんと「風上ちょい低めフォーム」を意識するようになってから、タープが一気に“落ち着きのいい屋根”になりました。
風速5〜8m/s:低く・小さく。“守り寄りフォーム”がデフォルト
5〜8m/sくらいになってくると、玄界灘沿いだと「お、今日はちょっと仕事してくるなこの風…」って感覚になります。
- 歩いていて「風あるな〜」とハッキリ感じる
- タープの端が常に揺れている
- 焚き火の煙の行き先が完全に一方向に固定される
このゾーンから先は、僕の中では完全に“守り寄りデー”です。
- ヘキサタープの場合
・片流れ or 風上低め+風下もそんなに上げないフォームが基本。
・「海側に向かってドーンと開く」のは、正直このレンジからはけっこうギャンブルです。 - レクタ・スクエアタープの場合
・Aフレーム(家の屋根型) or 片流れなど、面積を絞ったフォームにする。
・タープの「見える面」を一段小さくするイメージ。 - ガイロープ
・標準本数+4本くらい追加をデフォルトに。
・特にセンターラインと風上側の角は惜しまず増し増しで。
このゾーンで一番やりがちなのが、「まだ大丈夫っしょ」と思って高いフォームを維持し続けること。
僕も何度かそれで夜に後悔して、22時からヘッドライトでタープの張り替えをしたことがあります…。あれはマジで疲れます。
なので今は、風がこのレンジに入りそうだなと思ったら、最初から低め・小さめ・ガイロープ多めで組むのがマイルールです。
風速8〜10m/s:タープは「張り方」より、「張らない勇気」との勝負ゾーン
8〜10m/sになってくると、もうタープをどう張るかというより「そもそも今日張る?」の話になってきます。
- 風に向かって歩くと、ちょっと体を持っていかれそうになる
- 軽いチェアやグランドシートが、油断すると普通に飛ぶ
- タープを仮留めした時点で、布がバサバサ言い始める
このレンジでの僕のルールは、かなりはっきりしています。
- 基本は「タープなし前提」で一日のプランを組む
- どうしても必要なときだけ、小型タープを超低めで張る
(それも様子を見て、少しでも嫌な揺れ方をしたらすぐ畳む) - 設営時点から「これはダメだと思ったら即・車中モードに逃げる」前提で動く
一度、風速10m近い玄界灘の夜に「いけるっしょ」と判断を誤って、
タープを立てたまま眠ろうとして、本気で後悔しかけたことがあります。
そのとき痛感したのが、
「タープを立てなかった自分を褒める日」が、キャンプには確実にある
ってことでした。
今はこのレンジになったら、よほどのことがない限りタープは張りません。
テント+前室+車の陰だけでも、意外となんとかなるものです。
風速10m/s超:タープ云々じゃなく、“キャンプ続行するか”を考えるレベル
風速10m/s超は、もう完全に別世界です。
気象庁の公式解説でも、10m/s前後からは「風に向かって歩きにくい」「傘がさせない」レベルとされています。
- タープは立てない一択
- テントはフレーム強めのモデルを低く張る
- ペグ全打ち+ガイロープ全部使用が最低ライン
- 状況によっては、「そもそもキャンプを見送る」判断も全然アリ
正直、このレンジに入ってきたら、
- 「せっかく来たから」
- 「ここまで準備したし」
という気持ちと、どれだけ距離を取れるかが勝負です。
僕も昔、「ここで撤収したら負けな気がする」と変な意地を張って、
結果として夜中にテントごと揺さぶられて全然眠れなかった経験があります。
今なら、あのときの自分にこう言います。
「負けじゃなくて“正しい撤退”だから、さっさと帰ってラーメン食べて寝ろ」
タープって、うまく張れた日は本当に気持ちいい相棒なんですが、
強風下では一瞬で「リスクの塊」にもなり得る存在です。
だからこそ、
- 〜5m/s:フォーム意識で楽しむゾーン
- 5〜8m/s:低く・小さく・補強盛りで守りに入るゾーン
- 8〜10m/s:「張らない勇気」との勝負ゾーン
- 10m/s超:タープより自分とテントの安全を最優先するゾーン
この4つのレンジを、なんとなくでも頭に入れておいてもらえると、
「今日の風で、どこまでやっていいか」を自分で決めやすくなるはずです。
そしてなにより、
「今日はタープやめといたわ」と言えるキャンパーは、僕はむしろカッコいいと思っています。
よくある失敗パターンと、その対処法

パターン1:「高く張りすぎて、ただの帆」問題
タープ初心者〜中級者まで、ほぼ全員一回は通るのがこの「高く張りすぎ問題」です。
僕も20代のころ、玄界灘沿いで「どうせなら高く張って、写真映えさせたい欲」を抑えきれず、
ヘキサタープをガッツリ上げて張ったことがあります。
そのとき何が起きたかというと──
風がビューッと抜けた瞬間に、
タープが見事な“帆船モード”になってポールが前のめりダッシュ。
ペグがギリギリ耐えてくれたから笑い話で済んだけど、
「あれ抜けてたら、完全に人に向かって飛んでってたな…」と、後から本気でゾッとしました。
このパターンの対処法はめちゃくちゃシンプルです。
- ポールを一段下げる(180cm → 150cm前後)
- 風上側をとにかく低くする(片流れフォームに寄せる)
- 「頭さえ当たらなければOK」くらいの高さで割り切る
ポイントは、「見た目のカッコよさより“風に見せる面積”を減らすこと。
実際、ポールを1段下げて風上をグッと落としてやるだけで、
タープの揺れ方が「バサッ!バサッ!」から「フワッ…フワッ…」くらいまで変わります。
僕は今でも、風が少しでも怪しい日は設営のときにこう自分に言い聞かせています。
「今日は映えじゃなくて、生き残りフォームでいくぞ」と。
パターン2:ペグが抜ける・曲がる問題
強風タープで次に多いのが、「ペグ抜け・ペグ曲がり」問題。
風そのものより、抜けたペグ+飛んだポールのほうがよっぽど危ないパターンです。
僕も昔、ホームセンターで買った細いスチールペグを海キャンプに持ち込んで、
曲がる → 抜ける → 立て直す → また抜けるという無限ループに陥ったことがあります。
このパターンを潰すポイントは、主にこの3つです。
- ① ペグの長さと素材を見直す
風が強い日は、30cm以上の鍛造ペグ or ステンレスペグを基本にしてください。
「細い・軽い・短い」ペグは、強風&砂地や柔らかい土にはほぼ向きません。 - ② 打ち込み角度は「斜め45度」を意識
垂直にカンカン打ち込みたくなりますが、タープから引っ張られる向きと逆方向に45度くらい傾けて打つのが鉄則。
これだけで、抜けにくさが段違いに変わります。 - ③ ロープの結び位置をペグの「根本」に寄せる
ペグの頭のほうでロープを引っかけると、テコの原理で抜けやすくなります。
なるべくペグの根本側(地面に近いほう)にロープがかかるようにしてやると、
同じペグでも耐え方が全然違います。
玄界灘沿いで一晩過ごすと、「ペグは節約するところじゃないな…」と痛感します。
数本だけでもいいので、「本気用のロングペグ」を海&強風の日用にセットしておくのがおすすめです。
パターン3:風向きが変わって一気に不安定になる問題
これは「あるある過ぎて、もう風ってそういうもんだよね」としか言えない部分もあります。
さっきまで横風だったのに、気づいたら斜め後ろからビュンビュン吹き始める、みたいなやつ。
ただ、ここも事前にできる対策と、現場でのリカバリー策があります。
- ① センターラインにもガイロープを張っておく
タープの端だけで支えるフォームだと、風向きが変わった瞬間にバランスが崩れやすいんですよね。
最初からタープ中央付近にもガイロープを追加しておけば、
どの方向から風が来ても「最低限の形」は保ってくれます。 - ② 「風向き変わってきた?」と思った時点で、一度ちゃんと立ち上がる
ここ、めちゃくちゃ大事です。
「まあ様子見でいいか…」と座ったままにしておくと、大きく崩れてからの立て直しになってしまいます。
風の当たり方が変わったと感じたら、いったん椅子から立って、
ガイロープの角度やポールの高さを早めに微調整しておきましょう。
僕は、タープの揺れ方が変わった瞬間に、頭の中でこうスイッチを入れています。
「今から5分はメンテ時間」と。
この5分をケチると、後で30分〜1時間の大掛かりな張り替え&心労として返ってきます。
逆に、早めに触っておけば、タープはちゃんと「味方」のままでいてくれます。
タープの失敗って、その場ではちょっと凹むけど、
あとから振り返ると「あの夜があったから、今の張り方になってるんだよな」って思える経験値になります。
この記事を読んでくれているあなたには、
ぜひ僕がやらかした「高く張りすぎて帆」「ペグ貧弱事件」「風向きチェンジで大崩れ」あたりはショートカットしてもらって、
最初から“ちょい渋めで風に強いタープ使い”になってもらえたら嬉しいです。
よくある質問(Q&A)|タープと強風編
Q. 風速何m/sまでならタープ張っていいですか?
風について聞かれるときに、だいたいこの質問がセットで飛んできます。
正直に言うと、「この数字までは絶対安全!」というラインは存在しません。
地形・サイトレイアウト・タープの種類・ペグの効き具合…全部で変わります。
そのうえで、玄界灘まわりで何度もタープ検証してきた僕の“風間式ざっくり目安”はこんな感じです。
- 〜5m/s:張り方を意識すれば基本OKゾーン。
風上側を少し低めにして、「高く張りすぎて帆にしない」ことだけ意識しておけば、ヘキサでもレクタでも楽しめます。 - 5〜8m/s:フォーム次第ではいけるけど、完全に“守り寄りタープ”モード。
低く・小さく・ガイロープ多めが前提で、見た目より安定優先です。 - 8〜10m/s:ここから先は、僕は「基本タープなし」で考えます。
どうしても張りたいなら、小さめタープを超低く張る+「ヤバい」と思った瞬間に即撤収する前提で。 - 10m/s超:タープはやめときましょう、が風間の答えです。
風に向かって歩きづらいレベル(気象庁の目安でもこのあたりから「やや強い〜強い風」ゾーン)なので、
タープより、自分とテントの安全を最優先にしてください。
気象庁公式|風の強さと吹き方の目安
大事なのは、「数字だけで判断しない」ことです。
- アプリや気象庁の予報で「風速◯m」をチェック
- 現地では、「体感」と「タープ(テント)の揺れ方」もセットで見る
この「数字+現地の体感」の二段構えができてくると、
「今日はここまでならタープOK」「この風はもうやめとこう」という判断がかなり楽になります。
Q. 強風予報の日は、そもそもキャンプ行かないほうがいいですか?
これもよく聞かれるんですが、初めての海キャンプ+強風予報なら、僕はわりとハッキリこう言います。
「日程ずらせるなら、ずらしたほうがいい」と。
理由はシンプルで、
- 初回は「タープ+海+風」すべてが未知数だから
- ギアの限界も、自分のメンタルの限界も、まだ分かっていないから
その状態で、いきなり風速8〜10mクラスの玄界灘デビューは、さすがにハードモードすぎます。
一方で、何度か海キャンプを経験したあとなら話は別です。
- 「今日はタープなし前提で行く」
- 「風が上がってきたら、すぐ車中泊 or 早め撤収に切り替える」
- 「テントのペグは全打ち・ガイロープ総動員」がスタートライン
みたいに、最初から「プランB」をセットで持って行く前提なら、
「風の強さを体感しに行くキャンプ」として楽しむのは全然アリだと思っています。
僕自身、若いころは「せっかく休み取ったし」と意地で突っ込んで、
テントごと揺さぶられて一晩ほぼ寝れなかったことが何度かあります。
今なら、その頃の自分にこう言います。
「それはチャレンジじゃなくて、ただの無理ゲーだから、日程ずらせ」と。
Q. タープとテント、どっちを優先して守ればいいですか?
これはもう、迷う余地ナシで答えはひとつです。
テント一択。
タープは最悪、撤収すればどうにでもなりますが、
テントがやられると「寝る場所」と「荷物の避難場所」そのものが消えます。
なので、僕の優先順位はいつもこうです。
- 自分と一緒に来ている人の安全
- テント(寝床)を守ること
- タープは「怪しい」と感じたら即撤収候補
実際、玄界灘沿いで
「タープがちょっと怪しい揺れ方してきたな…」
と思ったら、僕はけっこう早い段階でこう動きます。
- タープの下の荷物を一度ぜんぶテントか車の近くに寄せる
- タープ撤収 → テント+車を風上に置いて“簡易風防モード”へ
「せっかく張ったのにもったいない」と思う気持ちも分かります。
でも、タープはまた張れます。人とテントは替えが効きません。
なので、迷ったときの合言葉はこれでいきましょう。
「タープは飾り。テントが城。」
この感覚さえ持っておけば、
強風の夜でも、だいぶ冷静に「どこまで攻めて、どこから守るか」の判断ができるようになるはずです。
まとめ|タープは「張らない勇気」まで含めてスキル
強風キャンプのタープ問題って、どうしても
「どれだけカッコよく張れるか」に意識が行きがちなんですよね。
昔の僕もまさにそうで、玄界灘沿いで「今日は写真撮るぞ!」モード全開でタープを高く張り、
その数時間後に爆風でヒヤッとするところまでがワンセットでした。
でも、何度もフィールドで痛い目を見て、メーカーの設営講習で人に教える側も経験してきた今、
本当に大事だなと思っているのは、この3つだけです。
- 風速と地形を見て、「今日はどこまでやってOKか」を自分で決めること
└ 予報の数字だけじゃなく、現地での体感+タープの揺れ方まで含めて判断する力。 - 「低く・小さく・ペグ本気」という、守り寄りの基本フォームを持っておくこと
└ 見た目9割のハイポジションじゃなくて、風と長く付き合えるローポジションの型を知っているかどうか。 - そして何より、「今日は張らない」「途中でやめる」という選択肢を普通に切れること
└ これができるようになると、一気にキャンプ全体の安全度と自由度が上がります。
タープって本来は、ちゃんと扱ってあげれば
「風から守ってくれる相棒」なんですよね。
でも、判断をミスった瞬間に、「風を全力で味方につけた敵」にもなります。
だからこそ、自分なりの“風速ライン”と“風に強い張り方の型”を持っておくと、
玄界灘クラスの海キャンプでも、タープをだいぶ安心して使えるようになります。
風の強さそのものの目安は、気象庁の公式ページがとても分かりやすく整理してくれています。
一度、自宅でざっと目を通しておくと、数字と体感がリンクしやすくなるのでおすすめです。
僕自身も、海キャンプの日は朝イチで気象庁+天気アプリの風予報を見てから出発しています。
「今日は〜5m/sだからフォーム意識して遊ぶ日だな」
「5〜8m/sだから、最初から守り寄りロースタイル一択」
「8m/s超えそうだから、タープはやめてテント+車ベースでいこう」
そんなふうに、家を出る前の時点でざっくり“戦略”を決めておく感じです。
このあと、海キャンプ全体の装備や塩害対策までしっかり押さえておきたい人は、
内部リンクで紹介している
「海キャンプ用ギア選びとメンテ術(塩とサビから道具を守る話)」の記事も、ぜひ続けて読んでみてください。
タープの「風の問題」と、ギア全体の「塩の問題」。
この2つさえクリアできれば、あなたの海キャンプは一気に“本番モード”に入ります。
あとはもう、風とちょっとだけ相談しながら、
「今日は張る」「今日は張らない」を自分で決めるだけ。
その判断がスッとできるようになったとき、タープはきっと、ただの布じゃなくて
「海で戦う相棒」に変わっているはずです。


